2011年8月9日火曜日

fractale 外苑西通り編(4)

山高帽を被りホワイトアッシュのステッキを持つ紳士が、
僕のことを「フラクタル」と呼んだ。

あまりにも自然に発せられたその低い声、
まったく違和感無く、自分の名前なのだと認識した。
すでに生まれたときからこのコードネームは決まっていたようだ。
それを1985年8月29日の朝に初めて耳にした。

紳士は一体何者なのか?
そして父は、母は、どこへ消えてしまったのだろうか?

二人は三徳山を下山した。

麓に停まっていたのは『いすゞ117クーペ』。
ジウジアーロがデザインした美しすぎる傑作車だ。
イタリアで開催された国際自動車デザイン・ビエンナーレに出品され、
見事名誉大賞を受賞している。


117クーペに乗り込み、出発した。
どこへ向うのかを訪ねると、
出雲大社だと知らされた。

島根県は鳥取県の隣。
さほど時間はかからなかった。

***

出雲大社に着いたとたん、豪雨。
そこに投入堂で見た龍が現れた。

その龍が父だということを、紳士から聞かされた。

父は『龍蛇族』。
人間が地球上に登場するまえから、

この世を守り、仕切り、コントロールしてきた種族。
父はその末裔。 
ここ出雲大社は、世界中に散らばった龍蛇族の本拠地だと知らされた。
つまり父にとっても帰るべき場所なのだとも。

毘沙門天謙信webより


この守護札を見せられて言葉を失った。


「今も龍蛇族が地球上のバランスをコントロールしています。
日本の中枢をコントロールしているのは龍蛇族、
皇室、警視庁公安部、神社は龍蛇族による組織です。
みな人間の容姿をもち、社会構造に入り込み、活動しています。
そのバランスに歪みが生じたとき、
龍蛇族と人間の子をもうけ、
粛正要員として送り込むのがしきたりでございます。」

紳士はさらりと言ってのけた、
この信じられないような話を。

母は、普通の人間だと紳士が教えてくれた。

龍蛇族と人間のあいだにできた子には、特殊な能力が備わる。
強力な治癒能力と、その治癒過程に発せられるパルス(脈動)だ。


さきほどの回復力はそのため。
パルスの放出に関しては自覚が無い。


14年の潜伏期間を経て、開花する能力。
龍の鱗に締め付けられることによって、何かのスイッチが入るのだそうだ。
紳士にもそれ以上の詳しいロジックはわからないそうだ。


「つまり、僕は崩れたバランスを取り戻すための粛正要員なのですか?」

「さようでございます」


なにはともあれ、僕はとんでもない体質を手に入れた。

***

20分ほど過ぎただろうか?
豪雨の中、我々以外には人がいなかった出雲大社は、
すがすがしい晴天となり、参拝客でにぎわっていた。

父の姿はどこにもない。
母は三徳山を登るときから存在が消えている。

***

紳士の名前は「小柴昌俊」物理学者だそうだ。
古くから小柴家は龍蛇族の参謀的役割を担ってきた名家。
小柴家は、何百年もかけて、
宇宙から降り注ぐ龍に必要なエネルギーを採取する技術を開発した。

***

僕と小柴さんは、117クーペで千葉の家へ向った。
16時間ほどで着いた。

「おかえりなさい」

「えっ!?」

僕の大好きな、とても美しくやさしい母が出迎えた。

「たっ   ただいま」

「まってたわよ、フラクタル」

「えっ!?」
もう修ではないんだ、、、。


つづく








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