2011年4月13日水曜日

たいして調べずにチッパーフィールド雑感

対比。
人はそれによって物事を認識する。
窓の外が明るい。本当に明るいのか?
自分の立っている空間が暗いから、
窓の外が明るく見えるだけかもしれない。

けっこう早いね!
けっこう重たい!
まあまあ青い!
など、
特にボーダーライン際の感覚は、対比に左右される。
比較対象の程度によって、その感覚は増大する。
また、減少もする。

そんな対比による認識は、
ときとして、お互いを引き立て合うことがある。
それぞれの魅力を声高に訴求し始める。

僕はそれが、21世紀の表現だと感じている。

デビッド・チッパーフィールドは
そんな建築家だと思う。(イギリス人)

顕著にそれを感じさせてくれる代表作は
NEUES MUSEUMの改修。2015年完成予定。
第二次世界大戦で壊れた、ベルリンの美術館島。


煉瓦作りの旧建築と、限りなくフラットな素材の対比。
これは解り易い。
煉瓦の壁は、より古めかしく、暖かみが感じられ、歴史の重圧を物語る。
フラットな建具は、平面と直線の関係がより美しく感じられ、
その無機質さが強調される。
そして、両者が作り出す一つの空間は、新しさでいっぱいになる。

幸福というものが右肩上がりの経済成長の中にだけあるのではないことに
みんな気が付いている。
消費し続けることに疑問を感じ始めている昨今。
エコロジー、エコロジー、と叫ばれて久しい昨今。
リーズナブルな時期は過ぎ、
成熟した文化と品格を意識的に作っていく必要がある。
対比は、その糸口を促している。

エイジングに美を見いだし、リペアーで違う次元へ誘う。
その結果生み出されるクオリティには、一朝一夕では太刀打ちできない。
考え方は、陶芸の「金継」に似ている。

ぼくがデビッド・チッパーフィールドを知ったのは
このテーブルで。

独立前に無印良品の仕事をしていて、
これにそっくりなテーブルをオフィスにプレゼントされた。
凄く美しいので、いろいろ調べたら、
デビッド・チッパーフィールドにたどり着いた。

残念ながら、無印良品のものは彼のデザインではなく、
たまたま凄く似ていただけ。どちらも美しいです。

このテーブルは、NEUES MUSEUMのような対比を、
いとも簡単に生み出してしまう。
ぼくの汚いオフィスでも、これを置くと、
疎密の関係性が瞬時に生成され、
お互いを引き立て合う。
汚いオフィスも浄化され、ゴミがゴミではなくなる。
テーブルもより美しく見える。

ちなみにこのテーブルの建築版がこれ

マールバッハ近代文学博物館です。

それからもう一つ、
デビッド・チッパーフィールドの作品で好きなのが、
Kaufhausチロル 。(チロルはアルプス山脈東部の地域)

これはレンダリングなのですが、
すごく素敵。
これも対比なのだけれど、
また意味が違う。
新旧、疎密、それらはきちんと機能している。
お互いを引き立て合っている。
さらにこれは同調もしているのです。
隣り合う建物の流れをそのまま受け入れて、
デフォルメしながらリピートしている。
いい。
21世紀な感じがする。
全てが近代化した映画のような世界は古くさい。

対比を感じながら生活していこうと思う。
太った僕は、小太りの人のそばに立ってあげて、
きみは本当は痩せているんだよって言ってあげようかな。

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