2011年4月24日日曜日

ブルージーンズもメモリーするのだ

おそれずに、短絡的な見解を書いてみようかな、、、と思います。


脳みそを持つ生物は、記憶ができる。
脳みそを持たない自然物は、記憶をするのだろうか?
(今回は、「記憶」をハートフルな「思い出」的なことと定義します。)

たぶん、石には記憶能力があると思う。
また、それを伝える力もあると思います。
「石=意志」この二つが同音なのも、なにかを勘ぐらせる。

多くの公共建築物には、石を使ったオブジェが置かれている場合が多い。
大使館、美術館、公民館、駅、百貨店、劇場など、
必ずと言っていい程、ある。
素敵だからそうするのだろうけど、それだけの理由では納得できない。
数があまりにも多い。

その多くは、全国各地から取り寄せた名石を使っている。
いずれも東京には無い大自然の恵みをいっぱい記憶した石たちです。
きっと、その素敵な記憶を伝える(流布する)能力があるがために、
その場を素敵空間に変えてしまうのだと思う。

以前、イサムノグチ庭園美術館の仕事をしたことがあり、
何度か高松を訪れた。
言わずと知れた、巨匠イサムノグチの作品に触れ、
受け止めきれない感動を覚えたものです。

イサム・ノグチ作 エナジーヴォイド


でも、私がイサムノグチ(石彫に限る)よりも興味を持ったのは、

イサムノグチの制作パートナーをずっと努めてきた彫刻家、
和泉正敏さんの作品です。

前述のように、石は記憶を持っていると思います。
この世に誕生してから、天変地異的なことを沢山経験し、
高松の石切場に眠っていたそれらを料理して、
自分の意志を融合させているのがイサムノグチ。
石は、長くて深い記憶が根底にあるからこそ、
削って、磨いて、うねらせて、着色されても、
作為的になりすぎない。そんな素材だと思います。

何十年も一緒に制作をしてきた和泉さんの作品は、
たぶんイサムノグチとは違う方向を追い求めているのではなかろうか?
間近で彼の創作に接してきたからこその志だと思う。

和泉さんの展覧会図録を作るために、作品を撮影させていただきながら、
ほんの少しですが、作品作りのことをご本人にお聞きしたことがある。

石には、芯(私の解釈では記憶)がある。
それを見つけるまでが創作活動。
あとはそれに従って割るだけ。
「石は磨けば磨く程弱くなり、叩けば叩くほど石でなくなってしまう。」
ということだそうです。
人間だって、記憶を書き換えられてしまったら、別人になってしまう。
ありのままの人生をどう生かすかが、生きた証になる。





この写真はその展覧会図録のページ。
私が好きな2作品です。すごく好きです。
さきほどの和泉さんの言葉が見事に昇華されている作品だと思います。
最小限の行為だけで作品に仕上げています。
でも、この石に出会って、対話して、何を施すかを決めるまでに
何年もかかっていることと思います。

誤解を覚悟で言うと、
イサムノグチと和泉正敏には、
「創る」と「創らない」の差がある。

世の中を見渡すと、著名な二人組には、
「理論派(創る)」と「天然派(創らない)」で構成されている場合が多い。
例えば、
「相棒の右京さんと亀山」とか「古畑任三郎と今泉君」とか「室井さんと青島」とか、
あっ刑事物ばっかりになっちゃった。
そうそう、お笑いコンビはほとんどがそのパターンですよね。
最近では「仮面ライダーW」も典型。

何が言いたいかというと、
自己完結できる人達は、自然界と繋がるルートを確保しているということ。
自分の中だけではアースできないので、
天然型人間の自然回帰能力を取り入れているのかな、と思う。

イサムノグチが自己完結できる人間とは思わないが、
かなりロジックがしっかりした人なので、
和泉さんがアースになっていた可能性は大。

都会に乱立している石のオブジェは、
アースになっていると思う。

石は置かれた場所の残留思念を記憶すると言われている。
だからむやみに持ち帰ると、その残留思念によって不吉なことが起きたり
するのだそうです。
その石が落ちていた場所が殺人現場だったかもしれないですものね。

石はお墓に使いますね。
お墓には沢山人が訪れますね。
そうしているうちに故人を偲ぶ思いが墓石に記憶されるんですね。
それがアースされて、故人に流れ込む。
そのための媒介なのだと思います。

イサムノグチのお墓は、
それを効率よくこなせるようにできている気がします。
すっごく素敵なお墓でした。

イサム・ノグチのお墓

「イサム・ノグチ」と「オサム・オオウチ」
響きが似ていません?

2 件のコメント:

  1. 某出版社からの依頼でお墓の取材などしていて、もう一度自分の行為を再考しようといろいろ調べてるうちに、辿りつきました。たいへん興味深く拝見いたしました、Twitterのほうでもフォローさせていただきます。

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  2. 下里さま、お読みいただきありがとうございます。
    とっても嬉しいです。よろしければたまに立ち寄ってみて下さい。

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